チームメンバーとの1on1を意味のあるものにしたいという話

チームメンバーと1on1をしているので、そこで自分が取り組んでいることをまとめておこうと思う。

なぜ1on1をしているのか?

以下の記事もあるとおり"マイクロサービスアーキテクトチーム"というチームを立ち上げたからである。 People Managementをする必要がある。

inside.dmm.com

自分がメンティーだった頃

今でこそメンターとしてチームメンバーと1on1をしているが、 自分がメンティーだった頃は1on1のメリットがいまいち分からなかった。 大体雑に「最近どうですか?」と聞かれて、特に何が解決するでもなく、最終的に雑談して終わった印象しかない。 自分も特に相談することがないので「特にないです」と回答することが多かった。

たまにエンジニアとしてのキャリアパスの話になったりもするが、 「どうなりたいですか?」と聞かれるだけで、"どういった選択肢があって、それぞれどういったメリデメがあるのか?そこにたどり着くにはどういったスキルが必要なのか?現実的に可能なのか?"という話はないので、ざっくりと「xxxみたいになりたいです」とだけ回答して終わることがほとんどだった気がする。

そんなこんなで当時は本気で「みんな1on1で何を話しているんだろう?」と思っていたが、 自分は人と話すのが好きなので、 1on1がほぼ雑談で終わっても普通に楽しかったし、仕事の息抜きにもなった。

自分がメンターの立場になった

自分がメンターとして1on1をやることになった。 一応"1on1をやらない"という選択肢もあったが「みんなやってるし、とりあえずやってみて、意味なさそうだったらやめよう」というノリで始めてみた。 ただ、どーせやるならメンティーにとって意味のある時間にしたいなーとは思っていた。

1on1の頻度

特にこだわりはないが「週一でやると話すことなさそう」と思ったので、2週間に1回の頻度で時間は30minにしている。 今はこのくらいがちょうどいいと思っている。

1on1で何を話しているのか?

現在1on1で話す内容は(社外用に若干丸めてる部分はあるが)以下である。 1on1では議事録をZoomやDiscordで画面共有して話した内容をすべてその場で残すようにしている。

目標の進捗確認とフィードバック

今の会社では半年ごとに目標とそれに対する評価をしている。 こーゆー目標設定&評価はどの会社でもやっていると思うが、 大体評価時期になると "目標と実際にやったことがズレていて、評価時期に目標を変更する" など、バタバタする印象がある。 なので、まずはここをちゃんとやらなきゃなと思った。

自分の1on1では毎回目標の進捗を確認している。 上手くいっている場合は問題ないので「いい感じですね」の一言で終わる。 隔週で確認するので、ものによっては"進捗なし"だったりするが、それも問題ない。 上手くいってない場合(目標達成に支障がある場合)は具体的に何が問題になっているかを確認し、 それが評価にどのように影響するのか? どのようにリカバリしようとしているのか? をすり合わせている(自分はチームのテックリードをやっていて、メンティーの評価者でもあるので、ここらへんの詳細をすり合わせることができる)。

目標に対するフィードバックは議事録ですべて残してるので、半年に一度の評価ではそれをベースに話をすることができる。 評価時期になってから「xxxができれば評価できた」という"評価者の後出しジャンケン"になることはないし、"言った言わない" ということもない。 被評価者からも「大体1on1のときに言われたことなので今期の評価に違和感はないです」というフィードバックをもらうことが多い。

目標の変更

目標を立ててから評価するまで半年の期間があると、 何かしらの都合で目標を変更せざるを得ないことがある。 というか、大体3ヶ月経つと目標や目標達成の基準が適切でなくなることがチラホラある。 1on1では目標の変更についても毎回確認しているので、変更が必要なタイミングですぐに変更を検討することができる。 目標が早く終わった場合は新しい目標を立ててもらう。

他チームへの貢献

マイクロサービスアーキテクトチームは"DMMプラットフォーム全体の技術戦略をリードする"という関係上、 メンティのポジションによっては"他チームにどのくらい良い影響を与えたか"が評価において重要になってくる。 そういった活動が目標に含まれていて正当に評価できればいいが、 目標の内容によっては必ずしもそうなるとは限らないので、目標で拾えない部分をここで確認している。 具体的には"他チームのコードレビュー", "他チームのDesign Docレビュー", "slackでの技術的なサポート" などを確認することが多い。 ここで確認した内容は良い点も悪い点も評価に反映するようにしている。

仕事の話

一応ヒアリング項目としては以下を用意している。

  • 仕事の難易度
  • やりたいこと
  • 困っていること
  • その他

ただ、これはメンティーが話しやすいように用意しているだけであって、ここにあるカテゴリーに縛られる必要はない。 明示的に "その他" という項目を用意しているのはそういった意図がある。 人によっては「特にないです」でサクッと終わることもあるが、それはそれでいいと思っている。

ここで自分が意識しているのは"仕事の相談をしてもらえる程度に信頼されているか?"である。

メンティーはサーバサイドエンジニア or SREなので、彼らから相談をしてもらえる程度の何か(例えば技術力とか)がないと相談してもらえない。 自分はチームのテックリードを務めていることもあって、立場上相談してもらえないことはないが、 メンティーから「この人に相談してもムダだな」と思われないよう、 彼らとある程度エンジニアとして議論できる程度のスキルレベルを持ち続けるように意識している(とはいえ、サーバサイド領域とSRE領域のそれぞれを深く理解するのは難しいので限界はある)。

キャリアパス

隔週でキャリアパスに変更がないかを確認している。 自分としては「隔週でキャリアパスが変わることもないので、毎回確認するのはムダかな」と思っていたが、 数ヶ月という単位で見ると(細かいのも含めて)意外と変わったりするので今も続けている。 メンティが自分のチームで得られない知識や経験を求める場合は部署異動や転職を勧めることもある。 正直自分の立場としてはチームから人がいなくなるのは困るが、キャリアパスってそーゆーものなので仕方ない。

メンティの職種はサーバサイドとSREである。 自分は長い間サーバサイドエンジニアだったこともあり、サーバサイドのキャリアパスであれば、それなりに相談に乗れると思うが、SREは正直難しい部分がある。 これは単にインフラ領域の業務経験が豊富にあるわけではないからである。 なので、SREのメンバーにとってpospomeのキャリアパス確認がどこまでメリットのあるものかは不明である。 後述するが、この点に関しては"pospome以外との1on1の案内"でケアすることになる。

メンティーキャリアパスは1on1の初回にヒアリングするが、 メンティーが若手エンジニア(新卒3年目以内くらい)の場合は自分がキャリアパスについて体系的に説明することにしている。 細かく書くと長文になるので、要点をまとめると以下である。

  • 職種の話
  • 得意領域の話
  • エンジニアに求められる技術力以外のスキルの話
  • 組織規模と求められるスキルセットの話
  • 市場価値と年収の話

(あくまで自分の経験がベースになってしまうが)最初にキャリアパスにおける体系的な知識をメンティーにインプットすることで、 キャリアパスの重要性を分かってもらえればいいなと思っている。

"市場価値と年収の話"では「xxx だと年収としては yyy が限界だと思います」「xxx ができれば、どの会社でも年収 yyy くらいは出すと思います」的な話をする。 将来設計というと少し大げさだが、年収ベースで話をすることで、キャリアパスの重要性を認識する人は少なくないと思う。 自分も新卒のときにこの話を聞いていればもう少し違ったキャリアパスになっていたかもしれない。

完了したタスクに対するフィードバック

自分はチームのテックリードを務めているので、普段の業務でメンティーの成果物をレビューしているが、 改めて1on1という場で"前回の1on1以降に完了した各タスクの成果物とプロセス"についてフィードバックをしている。 チーム内のタスクはJIRAで管理しているので、直近2週間でDoneになったJIRAチケットを1つ1つ見ていく感じである。

1on1だと「今思うとタスクのゴールが抽象的でしたね」とか「途中でやっていた他チームとのやりとりは xxx を考慮して効率よくやって欲しかったです」というように(自分のミスも含めて)1つ1つ細かく振り返ることができるので、 地味にメリットがあるなと思っている。

メンティの熱量を失わせないようにする

メンターとして1on1をやってみて分かったが、込み入った話だと1時間くらいかかることもある。 その場合は可能な限り後続の予定をリスケして、1on1を継続するようにしている。 改めて場を設けてもいいが、 そうするとメンティがそのときに持っていた熱量を失ってしまう可能性があるので、 一旦1on1で結論を出すことを優先している(急いで間違った結論を出することには意味がないので、そこは気をつける必要がある)。 この方針は後続の予定がリスケできないと破綻するので、事前に後続をリスケしやすいようにスケジューリングしている。

pospome以外の人との1on1の案内

メンティーからの相談内容に対する自分の回答は、あくまで自分の知識と経験がベースになっているので、 "他の人から見て正しいとは限らない"と自分は思っている。 なので、必要に応じてメンティに"posopme以外との1on1"を案内している。

簡単な例だと"同じ部署内の他チームのチームリーダーとの1on1"や"pospomeの上司との1on1"とかになるが、 過去には"DMMのVPoEとの1on1"や"知り合いのスタートアップのCEOとの1on1"をセッティングしたこともある。

メンティに「pospomeに相談してもムダだな」と思われたら終わりなので、そうならないように頑張っている。 自分の分からないことは分からないと割り切る。

メンターとメンティーの距離感

"メンティーには場合によってpospome以外の人との1on1を案内することがある"と書いたが、 実際に案内しても、メンターとメンティの距離が遠いせいか、継続的に1on1をするケースはほぼなく、 大体「話すことがない」ということになり打ち切りになってしまう。

これによって「1on1というのはメンターとメンティーの距離感が重要であり、 お互いにある程度明確な目的を持たないと意味がない」と思った(まあ当たり前なんだけど・・・)。 これは"メンティーであるpospomeとメンティーの距離が遠くなった場合、そのメンティーとの1on1は自分以外の誰かに変わってもらう必要がある"ことを意味する。

そして、最近その機会が訪れた。

自分のチームも最初に比べると大きくなってきたので、自分がメンティーの業務内容の詳細を把握するのが難しくなってきたからである。 正確に言うと、1on1のメンターを交代したわけではなく、 自分との1on1に加えて業務中に接する他の人とも隔週で1on1をするように変更し、それに合わせて組織体制も少し変えた。 メンティーからの評判は良いので、変更してよかったと思っている。 今後もチームは変化していくので、不適切な1on1体制にならないように注意しなければいけないなーと思った。

さらなる改善に向けて

自分としてはメンティに対して以下を提供するために1on1をやっているが、これは正しいのだろうか?(自分がメンティから得られることもあるけど、それは一旦置いておく)

  • 目標に対する納得感のある評価
  • 成長機会
  • やりたいことができる環境
  • 業務中に共有するまでもないちょっとした困りごとを相談する機会
  • キャリアパス設計

1on1は言ってしまえば"人と話すだけ"なので、やるだけなら誰でもできてしまう。 しかし、"やっていればOK"というものでもない。 1on1はメンティの成長機会や離職防止にもなると思うので、 組織として1on1に対する目的を明確にし、戦略を立てて実施しなければいけないと思っている。

自分としてもこれ以上の1on1改善には限界を感じているので、 今後は組織的な目的や戦略に取り組みたいなと思っている(ただ、ここに時間を割く余裕がないというのはある)。

意味のある1on1になっているか?

現在自分がメンターとしてやっている1on1が意味のあるものか?と言われると・・・どーなんでしょうね・・・。 自分では分からない。 単なる自己満足かもしれない。 ただ、今後も改善していって意味のある1on1にしていきたいと思っている。